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柔らかな檻
[1] Ping-WAVE α

 ねぇ、1たす1は、いくつだと思う? まあ、そう怒らないで。バカにしているわけじゃないんだ。
 で、どう? 1たす1は?
 ……ご名答。君の言う通り、1たす1は2だ。
 じゃあ君は、その答えは本当に正しいと言い切れる? それが正解で、それが現実で、この世界の真理であると考える?
 ……そう、残念ながら、2になった1と1は、やはり1と1でしかない。決して交わらず、いつ分離するかわからない恐怖に怯える1が、たまたまそこに2つあるというだけのこと。
 ぼくらは、誰かと一緒でいるふりをして、誰かと一緒にいるとみせかけて、その誰かと同じになることなんてできない。永遠に孤独のまま、足元の絶望から目を逸らしているにすぎないんだ。
 そんな顔するなよ。わかった、少し話を変えようか。
 1たす1が、1になること。ぼくは、それが一番美しい答えだと思うんだ。
 完全なる融合、完全なる調和──。どうだい、シビれるだろう?
 だけど、この世界は美しくない。この世界の1たす1は、2になるどころか、0になってしまうことも珍しくない。
 わかりやすく教えてあげよう。この世界はね、箱みたいなものさ。一人一人ひとつひとつ、自分という箱に詰められている。
 でも、箱の中にいるうちに、みんなどんどん腐っていくんだ。忘れていくのさ。自分がどんなことを考えていたのか、なにをしたかったのか……。
 自分がどんどん奪われて、箱の外から『与えられた者』だけが、『与えられたもの』でできた1になる。ありのままの姿を忘れた、つぎはぎの存在。それでも、そうなってようやく、人は1であることを許される。
 理不尽だと思わないか? 醜い姿だと思うだろう? それでも、それが『世界のあるべき姿』なんだ。まったく、バカげた話さ。
 ……与えられなかった者がどうなるのか、知りたい?
 その者はね、きっと、なに者にもなれない。あったことがなくなって、なかったことになってしまう。
 そうなったらもう、存在すら確かめられない。消えるのさ。キレイさっぱり、跡形もなくね。
 人を踏み台にしておいて、そんなことに気づきもしない醜い卑怯者たちが、よってたかって我が物顔で、世界を支配してるんだ。そんな世界は間違っている。君も、そう思うだろ?
 話を戻そう。醜くなってしまった世界に、美しい形を取り戻すには、どうしたらいいと思う?
 ……昔ね、試してみたことがあるんだ。──ああ、そうだね。確かに、それもその一つだった。
 あの時ぼくは、この世界を本来の姿に正すために、今あるルールを壊そうと考えた。まあ、誰かさんに邪魔されちゃったんだけどね。
 1たす1を、1にする。そのための方法を、僕はずっと探していたんだ。たとえば……そうだな。
 ある箱の中に、0になろうとしている1がある。彼の箱を壊して、ごちゃごちゃにかきまわして、ぐちゃぐちゃにかき混ぜた。
 そして、同じような1を集めて、一つの箱に入れてみた。ドロドロになった1と1で、1たす1を試してみたのさ。
 さて、どうなったと思う?
 ──じゃあ、その話を聞かせてあげよう。



【 続 】

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