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ピンドラ大人世代SS「魔法のような呪い、奇跡のような呪縛」

きっとなにものにもなれないSSを記念に書いておく記事です。
読んでやろうという方は↓のリンクからどうぞ。

夏芽父と眞悧の出逢いとかそんな感じの小ネタ。

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【 魔法のような呪い、奇跡のような呪縛 】

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火曜日と木曜日、夕暮れ時の中央図書館。
北側の書架の先にある閲覧席の窓際一番後ろの列。
彼はいつもそこにいた。

熱心に学ぶ受験生でもなく、息抜きに訪れた会社員でもない。
独特で幻想的な目立つ風貌。
乾いた日常から逃げ出し、潤いと休息を求めて図書館を訪れた夏芽の目を、彼は魅了した。

時間ならたっぷりあった。
彼の読む本を確かめ、次に彼が訪れる時までに、それを読んでおく。
ジャンルは様々だったが、誰も借りないような難解なものや、誤解を与えやすい作品が多かった。
彼は、どんな想いでそれを読んでいるのだろう。
彼へ対する興味はどんどんと増していった。

同じ列に座ったこともあるけれど、彼は夏芽に気づいていないようだった。
その内、彼のいない日が多くなる。
火木だけでなく、他の日も夏芽は図書館に入り浸る。
彼の姿を見つけると安堵して、彼のいない日は穏やかでいられない。
もっと近づきたい欲求を押し殺していた夏芽の前に、彼が現れた。

夏芽の持っていた本が、彼の探していたものだった。
憧れの青年との会話は唐突で、なぜか恥じらい、うまく話せない。
本を突き出した夏芽の手を取って、彼は顔を近づけてきた。
接吻けをされたことよりも、口唇の柔らかさに驚いた。
微笑む彼は、全てを知っていた。

夏芽が彼を見ていたこと、彼へ募らせていた感情と情欲。
夕日の落ちる図書館の片隅で、彼は膝をついて、夏芽に奉仕した。
ねっとりとした感情を呑み下して、口許を拭った指で夏芽の手を引き寄せる。
熱くなった股間に触れて、理性の箍は外れてしまった。

閉館時間も気にせずに互いの体を貪って、ようやく二人が落ち着いた時、彼は言った。
「暫くここにはこないから、あなたももう来なくていい」
夏芽は驚き、問いただした。
帰ってくるのか、いつなら会えるか、また会ってくれるのか。
すると彼は少し困って、そして、ゆっくり微笑んだ。
「あなたがそう望むなら、きっとまた会える。その時、あなたが本当に僕を求めてくれるなら」
そう言って、彼はいなくなった。
そして宣言通り図書館で彼には会うことはなくなった。

あの日の快感は、夏芽を余計に苦しめた。
あの時一線を越えなければこんなに焦がれることはなかったのに。
けれど再び会えるなら、全てを棄てて彼に全てを捧げよう。

何カ月、何年かが過ぎて、会いたい気持ちと会えないことへの絶望に夏芽が疲弊し始めた頃、彼は再び夏芽の前に現れた。
その後ろには、見覚えのない一人の男と、一人の女が立っていた。

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